日本語のドレスコード

目次

サンデー・モーニング。

ルー・リードが死んだ。
日曜の朝に。

ぼくは彼から多大な影響を受けていて、昔のレパートリーには、彼を題材にした “ルー” という曲があったし、彼の作風を真似て書いた曲もいくつもある(“チャーチにて”、“ラスト・ワルツ”、“スタッガー・リーを撃て” なんかがそうだ)。

そしてぼくらは、彼が《あの子はどんなドレスを着ればいい? 明日からの、すべてのパーティのために》と歌う“All Tomorrow's Parties” をステージに上がる前には必ず流している。

もしも、まだきみが彼の音楽を聴いたことがないなら、どうか今日は彼の遺した“Perfect Day” という曲を聴いてほしい。

さようならありがとルー、名古屋に向かう新幹線から。


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目に見えないものだけで それもトランク一個分で
丘の上のちいさな部屋に住む

窓の外には海辺や 花が見えるワケでもなくて
ただただ 色のない壁が続く

時計はもうすぐ 円じゃなく線にかわる
そしてぼくはルー・リードを歌う

目を開けたまま見る夢 幼いきみが産んだぼくは
前の世界にルー・リードを歌う

《ルー》(2005年)

2013年10月28日 10時50分

傑作を語る。

怒涛のキャンペーンが続いている。

しかし、かわいい我が子のためならばなんら苦ではなく、みんなに「これはいい子だ、いや素晴らしい素晴らしい」とほめそやされてデレデレと目じりを下げるだらしない親がぼくである。

地方のラジオ局めぐりも仙台、札幌、新潟と回って、残すは名古屋、大阪のみとなった。

仙台駅での出来事である。
喫煙所でたばこをぶかーと喫んでいた折、すぐとなりのギャルがおもむろに携帯電話を取り出し、誰かと会話を始めた。

「はいー。…うん。そうそう。…駅前の喫煙所だよ。おっさんイッパイいるとこ。超囲まれてるのが私。やばいから。はい、じゃねー。」

待ち合わせの際に相手に伝える目印は、わかりやすければわかりやすいほど良いもので、例えば「渋谷のモヤイ像」と言えばアレしかない。絶対に間違うことはない。渋谷においてモヤイがいる場所など他にないからである。
つまり、ぼくは仙台において絶対に間違うことがないほどの圧倒的なおっさんだったということになる。このショックからいまだ立ち直れずにいる。

札幌はヒジョーにタイトなスケジュールで、夕食も駆け込んだ寿司屋であまりに急いで食べたものだから板前さんに苦笑されてしまった。無粋で申し訳なくもあるが江戸っ子的と言えなくもない。

新潟では大好きな方々といつものようにたくさんのおしゃべりを楽しんだ。
この日だけでタウンページ1冊分はしゃべったんじゃなかろうか。
サテライト(外から見ることのできる)スタジオには寒い中、たくさんの方が並んで顔をのぞきに来て下さった。感無量。

そしてひさしぶりに会う方がみな口をそろえてアルバムを絶賛してくれる。
今、ぼくらはツアーに向けてリハーサルを始めているのだが、スタジオで演奏しながら楽曲のクオリティにあらためて感動してしまう。

これはぼくらの傑作かもしれない。

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先日はまたしても特別な対談。日本のすべてのパンクスのお手本となった人と。これは某誌の巻頭を飾る予定。

以前ここで書いたぼくのヒーローとの対談も、まもなく公開。

Zipperでの約2年ぶりの新連載も今月号から掲載されているのでこれも楽しみにしていて欲しい。



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写真はキャンペーンならぬシャンペインの番組にゲスト参加した際に。
洋平くんとは同生年、同財布だった。

ぼくがゲスト・ボーカルとして参加したセッションはSSTVで今週、来週の2回にわけて放映されるのでぜひ観てほしい。

“ゴッホ”MVにたくさんの感想をどうもありがとう。
次回はMVについて少し書いてみたい。

2013年10月27日 3時26分

購入者特典について。

なんとか〆切に間に合わせることができた。

以前ここでアイディアを募集した、購入者特典のことである(10月7日の日記を参照)。
その直後からたくさんのアイディアが届いた。主なものを列記してみると、

・ポスター、ポストカード、ステッカー、缶バッジ等の王道系
・未発表音源(アウトテイク、デモ等)
・スタジオライブDVD(チャプターで各メンバー別のアングルが選べるとなお良し)
・ミニ写真集
・Tシャツ
・しおり
・チケット入れ
・メンバー顔シール(小さいもの)
・ロゴ入りピック
・ジャケットのクリアファイル
・ピアス
・手首に巻くヒモ的なもの
・メンバーによるセルフライナーノーツ
・タオル、手ぬぐい
・実物大手形
・志磨のマンガ(アルバムタイトルにちなんで)
・MV用の絵コンテ
・年越しカウントダウン・ライブ
・バックステージ・パス
・メンバーにインタビューできる券(後日その模様を公開)
・メンバーからのバースデイ・カード引換券(有効期限は発売日から1年)

などなど。

意外だったのは、

・ポスター、ポストカード、ステッカー、缶バッジ等の王道系
の票がやはり多く、「王道系はフツーにうれしい」とのこと。
王道は、やはり支持されているからこその王道だったワケだ。納得。

次に多かった「DVD」は、初回盤の特典として今年3月の「TOUR 1954」ファイナルの日本青年館公演から8曲を抜粋し、収録することとした。
次ツアーへの予習としてご覧いただけると幸いである。すでにバンドはこの頃とは別のバンドのようだ。

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さて、そして問題の購入者特典である。

届いたアイディア一覧を前にむむむ、とスタッフとアタマをひねること数時間。くしくもこの日はMV撮影の直後であった。

『…あっ、あの新聞使おう!古倫比亜新聞!』

ビデオの中で男の子が持っていた、架空の新聞である。古倫比亜(コロンビア)。実際、わが国ではこういう当て字を使っていたそうな。但しわが社は正確には「コロムビア」。

撮影用に小道具として50部ほど刷ったのだが、「ちょーだい!ちょーだい!」と言って出演者やメンバー、スタッフは皆キャッキャと持ち帰っていた。

この裏に、

・メンバーによるセルフライナーノーツ
・MV用の絵コンテ

などを刷ればいいではないか!

・メンバーにインタビューできる券(後日公開)
も捨てがたいアイディアだったが時間がないので、僭越ながら私がインタビュアーを務めた。
それだと意味ねーじゃねーかぼんくら、とおっしゃるなかれ。

「メンバーの他愛もないおしゃべりをDVDか配信で」
「メンバーのことをもっと知れる読み物を」

という意見もヒジョーに多かったのだ。

なるべく他愛もない、かつ、彼らの人となりのわかるインタビューが出来たつもりだ。
メンバーによっては、話しにくいことまでちゃんと聞かせてくれたと思う。


・メンバーによるセルフライナーノーツ
もしかりである。ここのところ、私がインタビューの場に出て行くことが多かった。まあ歌って踊って矢面に立つ、までがボーカルの仕事である。

なので、ここで我々ははじめてメンバー4人でじっくりとこのアルバムを分析してみた。内容はとてもディープで、シビアなものだ。これは我々にとってもヒジョーに有意義なインタビューとなった。

なぜなら、このアルバムはすんなりと出来たものでは決してないからだ。
制作期間のスタジオでのやり合い、の片鱗。を味わって頂けたらと思う。


・MV用の絵コンテ は、
・志磨のマンガ(アルバムタイトルにちなんで)
も兼ねて。リリーさんの「ここまでしっかり描き込んだ絵コンテないよ(笑)」のお墨つきである。

それだけだと他2部に負ける気がしたので、音専誌では語る時間がなかった「ビデオについてのインタビュー」も追加した。

これで全3種である。あざとい!詐欺師!志磨の裏切り者!


MV絵コンテ+メンバー全員による『バンド・デシネ』全曲解説
がTOWER RECORDS(オンライン含む)、

MV絵コンテ+メンバー全員が初めてそれぞれの半生を語るインタビュー
がTSUTAYA、

MV絵コンテ+志磨遼平によるMV製作秘話
がHMV(オンライン含む)、

で、それぞれ入手できる。という仕組み!ワハハ!

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近くにどれもないよ!インターネットもやんないよ!
という方もご安心あれ。その他の店舗には、王道の「B2ポスター」のご用意があります。

歌って踊って矢面に立つ。さらに商才まで備える。こんな私に、誰がした!

アルバム購入を楽しんで頂けたら幸いである。

最後に、「特典なんていらない」という意見も多数あったことを追記しておく。


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2013年10月22日 15時22分

ずっと離さない、なにが起きても。

“ゴッホ”MV 無事公開されました

YouTubeでフルバージョンを公開、という英断を下した、コロムビア制作スタッフに心から感謝します

そして志磨組のみんな(現在発売中の『Cut』での、リリーさんの「これで俺も志磨組のひとりです」という発言は、ぼくの一生の宝物だ)
本当に、本当にありがとうございました

出演してくれた子供たち
どうかこの世界をうたがわず、大人になってね

ぼくはきみたちにこの曲を贈るよ

そして たくさんの、たくさんのメッセージをくれた すべての人
このビデオとこの歌を、どうぞ好きなときに思い出してね

あいしてます

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購入者特典 今晩〆切
撮影のエピソードはまた後日ゆっくりとここで書かせて

明日はサッポロ まっててね

それでは、おやすみ
ぼくのビデオそっくりの、美しい世界!



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2013年10月21日 1時55分

真夜中のニュース。

“ゴッホ”MV完成品、ついにコロムビア本社に納品されました

現在スタッフがこのビデオを(もちろん、フルバージョンで!)誰でもすぐ閲覧できるシステムを、最速で準備中です

早ければ本日中に、きみが“ゴッホ”のMVを目にする可能性が、どうやら出てきたよ!

さあ 覚悟はいいかね?

(ああ、神さま!どうかこのビデオが みんなのお気に召しますように)

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そして今 ぼくは購入者特典の制作の真っ最中です

そう、先日 ここでみなさんから募ったアイディアを
スタッフ2人+メンバー全員で、まさに今 カタチにしているところなのです

もらったアイディアは後日、ここにずらっと列記するね

その中のいくつかを、一気に実現するアイディアを ぼくらは思いついたのだ!

さあ いよいよ発売まであと2週間ちょっと

盛大に祝ってやってほしい
これは、ぼくらの「傑作」の発表の瞬間なんだよ

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昨日は仙台 出会えたすべての人に 幸多からんことを! アーメン
今日もたくさん取材をうけたよ

明日は某O誌で撮影とインタビュー

代々木でラジオの生放送にも出るって おひまならいらしてよ

近頃 まったくよく話すぼくらの、
言葉はすべて進軍の号令のように

威風堂々、高らかにひびけ!



2013年10月19日 2時42分

「言葉」を言葉で肯定する、試み。(寺山修司に捧ぐ)

言葉、言葉、言葉。

ぼくたちは言葉でしか世界を認識できない。

ぼくらに(惜しくも)忘れられてしまった出来事のすべては、
ただ言葉になりそこねた、というだけで「忘却」という悲運な末路を辿った。

本人に語られなかった歴史は、誰にも発見されずにただ死を待つのみなのだ。

だからこそ、ぼくらは語る。語り尽くす、それは雄弁に。
世界のすべてを記録しようという、これは無謀な挑戦なのだ。

(70億人×一生、という膨大なデータの受け皿が用意されているかを考えれば、これが無謀でなくてなんだというのだ)

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某FM局にて、今年が没後30年である寺山修司の特番のインタビュー収録。
その後、会社に戻ってドレスコーズを総括するロング・インタビュー。

言葉で歴史を肯定してみせる(そしてそれに成功した)一日。

ぼくはその最中で、いくつかのウソをついたかもしれない。
そして、それは今日をもって「正史」となる。
言語化の成功は、そのまま自分の歴史の大肯定にほかならないのだ。

ぼくらの歴史は、編集される時を待っている。
ただ自らの言葉によって、だけ。

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「墓は建ててほしくない。私の墓は、私の言葉であれば十分。」(寺山修司)


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2013年10月17日 1時38分

シェルター・フロム・ザ・ストーム。

台風が近づいているそうだ。
今はまだ雨足も弱く風もないが、翌朝がピークだという。
幸い、明日は仕事が夕方からなので今晩はこうして日記でも書きながらレコードをかけて、シェルター・フロム・ザ・ストーム、なんて気分をたのしむ。

さて、昨日の編集作業をもって、“ゴッホ”MVがついに完成した。

映像編集は中目黒にて、川村ケンスケ監督の師事のもと2日がかりの作業。
現場で撮っている時の「スピード感」と、編集で曲に合わせた時の「スピード感」のズレにMV製作の難しさを知る。
映画のように(もしくは現実のように)時間がゆったり流れたり早まったり、を行き来するのではなく、一定のビートに乗って、一定速度で流れてゆく映像こそMV的なのかもしれない。

しかし、川村監督の「でも志磨くんが撮る意味はそこにあるんじゃない?『MVらしくない』モノであるべきだよ」との助言にポン!とヒザを打つ。いつもながら単純である。

本当に、本当にいとおしい作品ができあがった。
もう昨晩から、ゆうに30回は観ているが、それでも観飽きない。ずっと観ていたい。ついニマニマしてしまう。

きっとドレスコーズマニアにはたまらないカットがいくつもあって、今はそれを一日も早く、皆さんと共有したい。
「あのアングルが…」だとか、「あの一瞬の表情が…」だとか。
「ハルオってチャラいよね…」だとか!

(撮影中はぼくの心のギャルがぎゃあぎゃあ大騒ぎして大変だった)

つまりこれは、ドレスコーズを最も近くで見ている男による、彼らのベストカット集でもあるのだ。

しかし、そのドレスコーズを最も近くで見ている男にも盲点があって、それはボーカルのヤツだけが常にずっと死角。という致命的なものである。
とにかく自分のカットにどうやってOKを出せばいいのかがまったくわからなかった。どのカットにも「うん… まあ… こんなもんでしょ…」程度の感想しかもてないのだ。

ひとまずボーカルのヤツに関しては、そこそこに映りの良いものを選んだ。ということにしておく。

そして、打ち合わせ中の映像(→http://www.youtube.com/user/thedresscodesCh)をご覧になった方ならもうお気づきだろうが、このMVは演奏シーンとドラマ・パートのふたつの流れで成り立っている。
リリー・フランキーさんにもご出演いただいたこのドラマは、“ゴッホ”と同じテーマから派生したもうひとつのストーリー、という趣のもの。
こちらについては、公開後に詳しく書くことにする。

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最近もテレビ番組で演奏を収録したりたくさんの取材をうけたり、と忙しくしていた。

そして昨日は編集のあと深夜の新宿ロフトへ。
TOWER RECORDSの国広氏による、勇退前の最後のイベントがあったため。

ライブがハネたあとのフロアでは、国広氏を慕うバンドマンや関係者が大勢残って打ち上げの真っ最中である。
しかし、おそらくぼくこそが国広氏にもっともお世話になった男で、この無念さはちょっと筆舌に尽くしがたい。

イベントでは丸山康太と越川和磨が並んでDJをする一幕もあったそうだ。

「いいヤツつかまえたな」と彼が言うので、ぼくはいかしたヤツとしかバンドは組まないよと答えた。

たとえばぼくの墓標には、「世界で最も素晴らしいロックンロール・バンドに二度も在籍した男」と刻む。あまりに幸福な、幸福な人生。

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明日はビデオのショートバージョンの編集(ちょっと気の利いたアイデアを思いついたのだ)、そのあと某ラジオ局で寺山修司に関する番組の収録。
寺山の著作をいくつか読み返してから眠ろうと思う。窓の外は雨風が強くなっている。


もうひとつの世で
血を吐く苦労でくらしていたとき
黒さは良いことであり
道はどろんこだった
わたしが荒野から
形のない生物から逃れてくると
「おはいり」と彼女がいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

この道をもういちどとおったら
安心して休めるよ
わたしは彼女のためにはいつも最善をつくそう
そのことは約束しよう
はがねの目の死の世界で
勝とうとして戦う男たちよ
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

ふたりはひとこともしゃべらなかった
ほとんど危険はなかった
その点まではすべて
未解決のままだった
想像してごらん
いつも安全であたたかい場所を
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

わたしは消耗で焼けつき
あられに埋められ
やぶでかぶれ
道で息切れがし
ワニのように狩りたてられ
はたけの中でふみにじられていた
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

とつぜん わたしがふりむくと
そこには彼女が立っていた
腕に銀の腕輪をはめ
髪に花かざり
すごくしとやかによってくると
わたしの茨の冠をとって
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

いまやふたりのあいだに壁がある
なにかが失われた
あまりにもあたりまえのこととおもいすぎた
わたしの信号は混乱した
おもってもごらん すべては
なんのへんてつもない朝にはじまったんだ
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

保安官補は痛い釘の上をあるき
牧師は乗馬馬にのる
しかしなにもたいして問題じゃない
問題なのは運命だけだ
そして一つ目の葬儀屋
彼はむだなラッパを吹く
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

生まれたばかりの赤ん坊が泣くのをきいた
朝のハトのようだ
それから歯の欠けたじいさんたちが
愛もなく立ちおうじょうしていた
あんたの質問がわかるかというのかい
希望もなく すがるところもないのかい
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

丘の上のちいさな村で
みんなはわたしの着物に賭けた
わたしは救いを期待したが
彼女は死の一服を盛った
わたしは純真さをささげたが
けいべつでむくわれた
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

わたしは異国に住んでいる
が国境をこえなくてはならない
実はカミソリの刃をあるく
いつしかわたしはやってみせる
もし時計をもどせさえしたらなあ
神と彼女が生まれた時まで
「おはいり」と彼女はいった
「あんたに嵐からの隠れ場所をあげるから」

《Shelter From The Storm / Bob Dylan》

2013年10月16日 1時49分

福岡での素晴らしい出来事、他。

バタバタとした数日間。

水曜は6時に起床、羽田へ。
キャンペーン初日である。

心配されていた台風の影響も受けず、ぼくを乗せたJAL309便はヒジョーに丁寧なランディングで福岡空港に到着。
しかし前日のMV撮影の疲れか、ぼくもマネージャーの庄司くんもまだ寝ぼけたまま。福岡市内は蒸し暑い。

RKBでインタビュー後、昼食。
ご当地グルメより、美味しいアイスコーヒー飲みたいね。と喫茶店へ。いわゆるひとつのチルアウト。

ようやく目も覚めたところでcrossfmへ。DJの栗善(くりぜん)さんは、ぼくのよき友人でもある。たったふた月ぶりの、和やかなインタビュー。

販売促進行脚だったキャンペーンはいつからか、好きな人に会いにゆく旅になっている。会わないあいだに書いたいくつかの歌を手土産に、というワケだ。

つまり、今やぼくには日本中に友人がいて、彼らから新しいレコードの感想を直接聞くことが、ぼくの仕事の幸せのひとつなのだ。

そのままLOVE FM、エフエム福岡、少しまんだらけをのぞいて、またRKBへ。
館内で、同じくキャンペーンにいらしていた吉井和哉先生と会う。

20時からUstream。お相手はRKBディレクターの寺井到さん。
最初は「カメラの反対側から、映らないように進行だけするから」とおっしゃっていたが、無理を言って一緒に出演いただいた。

これは本編でも話したことだが、前回のキャンペーンで、寺井さんはぼくの顔を見るなり「ドレスコーズを組んだ意味って、なに?」とおっしゃった。
ここには書かないが、もうちょっと辛辣な言葉もいただいた。

それが8月の7日のことである。

ぼくは帰京後すぐに“ゴッホ”を書き上げ、すでに完成していたアルバムにさらにこれを加えた。

つまり、寺井さんの言葉がなければこのアルバムは当初の予定通り10月23日に発売され、そして“ゴッホ”は収録されていなかったことになる。

どうしてぼくがそこまでこの寺井到という人を信用しているかというと、それは彼が作品を「宣伝」ではなく「批評」してくれる、数少ない音楽関係者だからだ。

そして「…これは、素晴らしいアルバムです」という寺井さんの賛辞からスタートした今回のUstreamは2時間にわたる長いものとなった。
おそらく『バンド・デシネ』に関する、もっとも重要なインタビューのひとつになったハズだ。

番組終了後、ご当地グルメの水炊きとごまかんぱち。もちろん寺井さんと。

・・・・・・・・・・・・・

翌日取材、タワレコ訪問を終えて帰京。
渋谷で知人に会う。ビールとワイン。

今日は昼すぎに起きて、たまっていた仕事をいくつか。
明日の仕事で使うレコードを45枚セレクト、チェックしているうちに聴き込んでしまい、今。

ひさしぶりにたくさんの名盤を聴いた。感動おさまらず。
これからここでも少しずつ紹介していこうと思う。


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福岡空港内の看板。
めんたいロック的である。


 

2013年10月12日 1時44分

撮影終了。

“ゴッホ” MV撮影、すべて終了!

すべてのキャスト、すべてのスタッフ

志磨組のみんな、

そしてリリーさん

ホントにどうもありがとう お疲れさまでした
おかげで世界一うつくしいビデオが出来そうです



さあ、残すは編集!

丸二日分のフィルムを、ほとんど棒にふって
たった4分にしかならないなんて

まるで、まるでぼくらの記憶そのものじゃないか!

すべて覚えていられたらいいのに
それくらい幸せな撮影でした

完成したなら、まっさきにきみに見せたい



明日はキャンペーン初日
待っててね福岡

あと 初回特典のアイディア みんなどうもありがとう
ビックリするほどの数が届いています

それもまた みんなの意見をまとめて、
ここで発表したいと思う


それでは おやすみ
きみをあいしてる

(今日、ぼくはゴッホの扮装をした)


監督 志磨遼平より

2013年10月08日 23時10分

アイディア、募集。

昨日はフジテレビで「FACTORY」の収録。

この番組は、いわゆる「音楽番組」とはちょっと趣の異なるモノで、お台場のスタジオの中にホントのライブハウスを作り、毎回4~6組のバンドが観客の前でみっちり30分ずつライブをする、という出演者にもファンにも評判のよい良心的番組。

ぼくがハタチの頃には地上波のフジテレビで深夜に放送されていて、DMBQやMAD3等、好きなバンドが出る週はいつも友人に録画を頼んでいた。
各出演者がステージに向かう時の足元だけを映す、あの演出もカッコよかった。(なぜやらなくなったんだろう?)

局に13時頃到着。ぼくは少し寝坊。
ステージでは黒猫チェルシーがチェックを終えるところ。彼らはホントに可愛い後輩だ、とぼくは一方的に思っている。
しかし大知くんは最近とても調子がよさそうだ。

我々もステージに上がり、数曲チェック。気に入って使っていた細いシルバーのマイクが近頃不調なので、ひさしぶりに昔のマイクに戻す。

特に大きな問題もなく早々にチェックを終え、本番まであと6時間以上。
テレビっていつもこうなのだ。

王欣太「達人伝」を読んだり(まだ2巻が発売になったばかりだが、これは期待せざるをえない)映画を観たり少し眠ったりして過ごす。楽屋の外はゲーノージンだらけ。

そして本番。
テレビということは完全に忘れてしまう。

本番後には汗を拭くまもなく裏のセットに移動してトーク、これもこの番組の特色である。
スターベムズの日高氏をお相手に、新作の話など。(今日行われた和歌山でのフェスも盛況だったようでなにより)

・・・・・・・・・・・・・

そして本日は昼から(2ヶ月連続となる)JAPANの撮影・取材。

撮影は新木場の海辺にて。日曜ということもあってか人が多い。釣りをしたり横になって昼寝をしたりとめいめいが休日を満喫している様子。これもまたトーキョーの風景。

丸山は友人からもらったという帽子を大事そうにかぶって写真におさまっていた。ぼくは彼のこういうところが好きだ。

ロッキング・オン本社に移動し、長い、長いインタビュー。
徳山氏による、とても濃密で核心的な内容。ぼくにとっても、ヒジョーに意味のあるインタビュー。

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いよいよアルバム発売まで一ヶ月を切った。
準備もいよいよ佳境である。

ところで、作品のリリースに際し「購入者特典」なるモノがこう、なんというか… 充実しはじめたのって、一体いつ頃からだろうか。

いち音楽フアンとしては、あまり国内新譜を購入しないせいもあって、特典内容に購買欲を左右された経験がほとんどない。

ので、自分がリリースする時期には、なにを用意すれば喜んでもらえるんかしらん、といつも悩んでしまう。

個人的には、スタジオのアウトテイクやジャムセッション、カバー曲なんかを、例えば7インチのレコードで付けられたりしたならとってもイカしてると思うのだが、利害のバランスが極度に悪い案のようだ。

そこで前回のシングルの時は、“ジャンゴ(仮)”という未発表曲を提供し、それを無料ダウンロードできるシステムを作ってもらった。
しかし、これも思ったほどうまい案ではなかったようである。

通例としてはポスターやバッヂといったものが需要もあってコストもグー、というハナシだが、本当のところは果たしてどうなんだろう。

(まあ「通例」なんて言葉には虫唾が走る、っちゅうような方が我々の作品の購買層であることは確かだと思う)

こういうものが欲しい、という具体案があればぜひ聞かせてほしい。参考にしたいと思う。

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明日は某サイトがセッティングして下さった信じられない対談。
ぼくのヒーローに会う。

14才の頃に見た夢がまるでずっと続いてるような人生に、また明日がくる。
ぼくは幸せをおそれない。明日がはやくくればいい。

きっと今夜は眠れないんだろう。
けれどひとまず、おやすみ。


2013年10月07日 0時17分

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