日本語のドレスコード

ぼくとキングブラザーズ。

来週末の20日(土)21日(日)の二日間、渋谷にあるライブハウス10ヶ所を使って行われるショウケース形式のフェスティバル、その名も『YATSUI FESTIVAL! 2015』。主催はもちろん、ニコ生特番「志磨遼平とおんな」でも司会を務めていただいたやついいちろうさん(エレキコミック)。

その二日目、21日(日)にドレスコーズが出演することになりました。
今回の編成は、ぼく×KING BROTHERS。

ぼくとKING BROTHERS(以下、キング)の出会いは15年ほど前にさかのぼります。まだぼくが18の頃です。
偶然、本屋で見かけた『ミュージックアーティスト Vol.1』というムック本に取り上げられていた、ぴたぴたの黒いスーツに身を包んだ3人組。
ガムテープでぐるぐる巻きに補強したボロボロのコンバースとボロボロのビザール・ギター、ひとりは白目を剥いてマイクを口にくわえ、なにかわめき散らしながらギターを弾いている。その後ろではアフロヘアーのドラマーが、頭上はるか上でスティックをクロスさせ、小さなドラムセットめがけて今にもそれを振り下ろさんとしている。そんな狂騒に背を向け、すべてに飽きたような顔でステージをとっとと去ろうとする、もうひとりのギタリスト。

メンバーにベーシストがいない(!)事を差し引いても、その写真に写るバンドはなにもかもが普通じゃなかった。そのうえ記事を読めば、同じ関西に住む、年も三つほどしか変わらないインディーバンド、とのこと。
とにかくその一枚の写真があまりにもクールで、ぼくは慌てて情報を集め、彼らが大阪市立大学の学園祭に出演することを知って、すぐさま友人を連れて向かったのでした。

当時、キングはすでにLD&K(通称:星盤)とDECKREC(通称:赤盤)から2枚のレコードを発表していましたが、それらはぼくの住む街では当然手に入らず、つまりただの一曲も知らないでライブに向かったワケだけれど、ぼくにはなぜか確信があった。今日これから見るライブでぼくのなにかが大きく変わってしまうんだ、という強い確信がありました。

やがて、大勢の学生がつめかけた野外特設ステージに、写真で見たよりもずっと細い3人が現れる。マイクをくわえていた方のギタリストの眉は剃り落とされていて、今にもこちらに飛びかかろうと気を張る番犬のような顔でジリジリしている。
瞬間、あの写真と同じように振りかぶったドラマーがスネアめがけてスティックを振り下ろしたそれを合図に、秋空をつんざく雷鳴みたいなギターが轟きました。

『俺たちがキングブラザーズ!俺たちがキングブラザーズ!』

叫んだのはクールな方のギタリスト。彼がシンガーらしかった。曲は50年代のシカゴ・ブルースの、スピードを倍速にチューンアップしたようなサウンド。しかしグルーヴはベースレスであることを忘れるほどヘヴィーで、そこに「くだらねえ」「退屈ばっかり」「腐っちまう」と、ありったけのイライラと呪詛の叫びをのせてゆく。

『後ろの方で突っ立てる人はとっとと帰ってください。……オイ!そこのお前だよ!オ・マ・エ!』

ふと、もう片方の番犬みたいなギタリストに目をやれば、彼はいつのまにかステージ横に設置された巨大なスピーカーの上にするするっ、と登っていて、あろうことかその高さから客席の人の波に飛び込んだのでした。

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と、そんな出会いから15年。
思えば、ぼくが毛皮のマリーズとしてデビューした2006年、初めて主催したデビュー記念ライブにゲストバンドとして迎えたのもKING BROTHERSでした。
それを境に、以後ぼくらは何度もツアーやイベントで共演を重ね、そのあいだにキングは幾度かのドラマーチェンジを繰り返し、ぼくにもたくさんのいろんなことがあって(なにを隠そうマリーズは一度、解散の危機をキングに救われているのです。この話はまたいつか)そうして今回の「やついフェス」にあたって、ぼくからドレスコーズのステージへの参加をオファーした、というワケです。

キングは前日の20日まで関西〜四国方面をツアー中、という大変な日程にも関わらず、ぼくの無茶なオファーを快諾してくれました。
前売り券はほぼ完売してしまったということなので、いらっしゃる方はどうぞ今回限りの“すこぶる凶暴な”ドレスコーズを見逃さないように。

無事では、帰さない!


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2015年06月12日 20時0分

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