日本語のドレスコード

目次

恋と労働のシンフォニーをゆけ。

昼12時に起床。スタジオへ。
前の晩にヘンな寝方をしたせいか、アタマが冴えず。

昨晩はコロムビアにてMVの細かい打ち合わせ、大掛かりな映像に無謀にも挑戦しているため今は不安ばかりだが、打ち合わせを重ねて少し安心。

そしてそのまま末広町の串焼屋に移動してさらに別の打ち合わせ、
しかし出てくるモノがいちいち旨いので打ち合わせにならず。全員ひたすら食べて飲む。

帰宅後、ずっと資料に目を通しているうちに寝落ち。日記の連日更新途絶える。

そして本日スタジオではリハーサル。(プロは練習と言ってはいけない)
約ひと月あいたためステージが恋しい。

ぼくはステージで、なにも考えていない。それがいい事か悪い事かは知らない。
本来、ぼくはアブない人である。それは自覚している。
だから日常ではいろいろ自制している。つもりである。
なので「ステージにしか居場所はない」とは思わない。ぼくはぼくの大切な場所でちゃんとしていたい。
だが、本当のぼくってああなのだ。どうしようもない。
ぼくはステージに立てなければこわれてしまうだろう。

事務所に移動して大阪用の楽器を積み込む。
ぼくらのバンドワゴンは車検から帰ってきたばかりである。
ダメになるまでまだ走ってもらう。

そのまま新宿でおすし。ユニオンをひやかすも集中力なし。今聴きたいレコードは手元にある、ということだ。と思うことにする。

帰宅後、昨日の資料のつづきに目を通す。また1時間ほど寝る。
なんとかさっき読了。さあ仕事にとりかかるぞ、と思ったらこんな時間。

明日も取材だし今日は寝ることにする。寝れなそうな気もする。

満ち足りた毎日。




写真は「ゴッホ」MV制作チーム志磨組。乞うご期待。

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2013年09月30日 3時37分

ファッションとアティチュード。

10時半に起床。
先日急にスウォッチがひとつ欲しくなって、注文していたものが届く。うれしい。さっそく腕にはめて、コロムビア本社へ。

本日はアルバム取材2本。P誌とQ誌。Q誌は愛読していたものの今までご縁がなく、今回が初取材。うれしい。

あいだに一本、テレビ番組の打ち合わせ。
バンドでの出演ではないが、企画の内容が内容なだけに、ヒジョーに楽しみである。

夜18時頃、すべて終了。日が落ちると途端に寒い。コロムビア御用達の喫茶店「SABOU」にて丸山・山中両氏とホットコーヒー飲んで帰宅。

自宅にて宿題。MV用に絵コンテ11枚。
はじめて挑戦したが、マンガ用の下書きと要領は同じか。6時間かけて完成。遅筆。

これから就寝、昨日買った本を読み始める。


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2013年09月28日 2時50分

すべての映画は、ぼくらのエチュードだ。

午前10時に起床。打ち合わせが続けて2本。

まず事務所にてミュージックビデオの制作スタッフと。

昨夜発表のとおり、今回のMVのメガホンはぼくがとる事に決定した。
自主制作を入れれば数本目だが、本格的なものは初。

それは一週間ほど前のことだった。

「…もしもし。しまちゃんよ。」

昼間にめずらしく鳴った電話はコロムビアのディレクターI氏から。
ぼくとI氏の付き合いもかれこれ4年目で、近頃ではもう声のトーンを聞けば用件の良し悪しが判別できるようになってきてしまった。

「“ゴッホ”のMVの監督ナ、決めたデ。」

これは心構えが必要な方のトーン。

「…ジャーン!志磨遼平や!」

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さっそく書き上げた数パターンのプロットの中から悩み抜いて一本に絞り込み、今日は2度目のミーティング。
ロケ場所、キャスティングがほぼ決定。

ぼくらは、必ずきみを驚かせる自信がある!

ところでこれは余談だが、技術的な無知をおぎなってもらうため、ぼくは最も信頼の置ける映像監督とそのチームに協力を願い出た。

その監督がくれるアドバイスが、毎回とても参考になるのだ。

これはもしかすると、ぼく以外の人も必要としているアドバイスかもしれない。そう思って、前回のミーティング中からすでにカメラを回してもらっている。

モノを創る人にとって、結果と同じくらい興味があるのはそれが生まれたプロセスだったりする。それをそっくりそのままきみに見せるつもりだ。どうか楽しみにしてほしい。

もう一本の打ち合わせは神保町にて。
新しく始まる連載のための。

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昨日の日記にもたくさんの返事が届いた。
すべて読んでいるし、許されるならここに載せたいものもある。
きみは、覚悟して送ってくれたまえ。

そして何人かに誤解を招いているのは、ぼくの文章がうまくないせいだ。

ぼくは、真っ暗な客席をもっとよく見るため、飛びこんだりきみのアタマをふんづけたりしているのだ!

だからぼくは、いつも目をひんむいて歌っている。あれはあとで映像なんかで見ると、実にガッカリくる顔をしている。

しかし、そうすればぼくにだってきみがハッキリ見えるのだ、ということ。

誤解を招いたことを、あやまる。

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打ち合わせのあと、めったに来ない神保町なので古本を買い込む。
音楽書籍4冊、文庫本1冊、漫画2冊、ポスター1本。

中でも「JAZZ COVERS」という図録は素晴らしい。40年代から90年代初期までのジャズのレコードジャケットが、デザイナーや写真家の紹介つきで650点以上も載っているというすぐれモノ。もちろんオールカラー。こんな本をずっと探していた。

そして紙袋を引きずったまま、珈琲屋「さぼうる」へ。ベタなコース。

帰宅後ブロス連載、まさかのHi-STANDARDネタ。土舘さんいつも遅くてゴメン。


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2013年09月27日 1時53分

ドレスコーズを殺すな。

昨夜、このブログが無事に開設されたのを見届けて、ぼくは友達とすっかり酔っぱらってしまうことに決めた。
少しおおげさに始めてしまった気もするし(バンドマンが日記なんて、とぼくはいまだにそう思うし)それでも、これから始まるここでの試みを思うと、どうにも興奮が治まらないのだった。
つまり、夜にお酒を飲みに出るには十分な口実があったワケだ!

雨が降る中を少し歩いて、明け方に家に帰った。
パソコンを開くと、すでに山のような返事が届いていた。

それも、さっきまでには全部読んでしまった。

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昨日の「まえがき」で、ぼくはこんなことを書いた。

《ぼくはここ1年ほど音楽にだけ見とれていた。他の誰も目に入らないで、それは「かけおち」と似ていた。》

この1年半ほどを、ぼくはなるべく口をつぐんで生きてきたつもりだ。
それは、生まれたばかりの無垢なバンドにぼくの言葉や歴史をかぶせてしまうことをひどく恐れていたからだった。

生まれたばかりの命は無垢で美しく、それゆえに無防備だ。
ほんのわずかな傷や病でも命とりになるだろう。もしもそんなことがあったなら、それはすべてぼくの責任だ、そんなことを考えては躍起になっていた。

きっとこれは、自分がバンドをひとつ失っているからかもしれない。

そうして生まれた1stアルバムは、ぼくらがぼくらのためだけに作ったものだ。誰のためでもなく、ただぼくらのためだけに書かれ、演奏されたものだった。

こんな「かけおち」の季節に、その時のぼくは『1954』と名前をつけている。
1stアルバムのラストに収録した曲であり、またドレスコーズが初めて経験したツアーのタイトルでもある。

あのツアーでぼくらの音楽は、果たして誰に届いていたんだろうか。
ぼくらの目の前にいた大勢の人たちの顔が、今なぜかまったく思い出せないのだ。

ぼくが書いた歌はぼくによって歌われ、それをぼくだけが聴いていた。
まるで宛先不明で返ってきた手紙のようだった。

ステージから見る客席はいつだって闇の中だ。

ぼくはいつも、ぼくの歌を誰が聴いているのか知ろうとし、結局それは最後までハッキリと見えない。

真っ暗な客席、宛先不明で返ってきた手紙。

これが1954年のぼくの記憶になっている。

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このファースト・ツアーは、ぼくを大きく変えた。

その後、バンドは新たな制作にとりかかり、まず “We are” や “シネマ・シネマ・シネマ” 、 “ハーベスト” そして “トートロジー” といった曲が生まれた。

そのどれもが驚くほどストレートで、特別な響きをもった曲ばかりだった。

そして同時にぼくらが取りかかったのは、次の新たなツアーの企画だった。「VS SERIES」と銘打った、ツーマン・ツアーの開始である。

ライブハウスで育ったぼくらは、二組のバンドが先攻・後攻でぶつかる、いわゆる「ツーマン形式」が持つ緊張感と興奮をよく知っている。
自分たちだけのワンマンライブか、もしくは一挙に何組ものアーティストが出る大型フェスしか経験していないぼくらは、あの緊張感と興奮の中で、忘れた記憶のようなものを必死に取り戻そうとしていた。

そして新曲も試すうちに、いつしかぼくは昔のように真っ暗な客席に足を踏み入れて歌うようになっていた。

そうなのだ。

ぼくが見てきたステージからの景色は、いつだって真っ暗だった。
目の悪いぼくにはいつもそう見えていた。
だから客席によく飛び込んでいたのだ。

ぼくは今度こそ知ろうと思った。
ぼくの歌を、一体誰が聴いているのかを。

ドレスコーズは、もう「ぼくが守るべきバンド」なんかではとっくになくなっていた。

あの暗い客席の中にいる、誰かのものになっていたのだ。

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そう、これがぼくが日記をつけ始めたもうひとつの理由だ。

つまり、きみとぼくが、細かいことのひとつひとつまでちゃんと覚えていられるように!

さて、ぼくはここで、きみに向けてくだらないことをたくさん書くだろう。
わずか数行しか書いてないで、ガッカリさせる日もあるかもしれない。

そしてたまに、書くべきかどうか悩むようなこんな話も打ち明けてしまうだろう。

それでいいと、今は思っている。
ぼくはバンドマンで、これは日記なのだから。

それでは、きみに握手を。
今日はこの日記を書くことに1日を費やしてしまった。
連載〆切、明日には書くこと。



2013年09月25日 20時56分

まえがき。

ひさしぶりに時間ができた。
シングルを含め、およそ半年続いたレコーディングがようやく終わったのだ。

そしてぼくはどこかに出かけるでもなく、こうして部屋でひとり、文章をつづっている。

なにか書きたくなったのは、古本屋でみつけたエッセイ集がちょっと良くてマネをしたくなったからなんだけど、やっぱり一番の理由は、今部屋でひとりだということかもしれない。
部屋はずいぶん散らかしっぱなしで、せっかくの休みを片づけと掃除洗濯で潰す、というのは衛生的だし悪くはないけれど、それより誰かに会って、近頃のおもしろかった事なんかをしゃべりたいな、と思った。

しかし、誰に会えばいいのか考え込んでしまったのだ。

最近聴いているレコードだとか、すてきな靴を買ったとか、あるいは終えたばかりのステージの感想や、完成したばかりのアルバムの話を、ぼくは誰にすればいいんだったっけ?

それがわかるのにちょっと時間がかかるくらい、ぼくはここ1年ほど音楽にだけ見とれていた。他の誰も目に入らないで、それは「かけおち」と似ていた。ひとりぼっちの、かけおち。

そんな話をぼくはようやく、きみに聞かせたいと思えたのだ。
ちゃんときみからの返事も受けられるように、下にはメールフォームもつけてもらった。
つまりこれはぼくからの、ずっと続くだろう長くてくだらない私信なのだ。

明日からぼくは、それを少しずつ少しずつきみに送ろうと思う。
いつかまとめて読んだならきっと膨大な量になる手紙、それがそのままぼくらの歴史となるように!

それでは、ぼくは今からスタジオ、夜にはラジオで少しここの話もするかもしれない。
きみに握手を。

志磨遼平


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2013年09月24日 16時10分

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