日本語のドレスコード

日比谷野音公演を終えて。

ぼくらの、夏の野音が終わった。

お越しいただいた皆さん、本当にどうもありがとう
こちらはようやく、ひと段落しました

ぼくが雨男だ、というんで 皆さんにはずいぶん心配をかけたようだけど!
開演時間の16時半には見事、真夏のお日さまがありがたいお顔をのぞかせてくれていました

この公演が決まった日からずっとぼくらがオープニングS.E.に使っているバーブラ・ストライサンドの“パレードに雨を降らせないで”が、いよいよ野音のステージに流れたときには、胸にぐっとこみあげるものがありました

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ぼくの感想はと言うと
あの日は とても、とても素晴らしい一日だった

それは、今のぼくらのすべてがちゃんと出たライブになったからで
裸のぼくらは、野音のステージに正々堂々と立っていた
思い返すと、それがなにより感動的だった

たとえば、バンドマンには とても悔しい思いの残るライブというのがどうしてもあって、そんな日の夜は、まるでなにを食べたって味がしない
ただぼう然と、自分のひざのあたりをじっと見る
取り返しのつかない酷いウソをついてしまったような罪悪感に似ている
今すぐきみを追いかけていって、洗いざらい打ち明けてしまいたい衝動にかられる

そしてあの日の野音は、隠し立てのない、ぼくらのすべてだった
見事なまでに、正直に。

だってぼくらは、必死にあの日を迎えたのだ。

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ここからは、さらに個人的な感想を。
よく考えると、外で大空にむかって2時間も歌を歌うなんて経験は、生まれてはじめてのことだった

ぼくらが普段演奏をする「ライブハウス」という空間はとても特殊で、真っ暗な空間に何百人という他人とギュウギュウに押し合ってビカビカ輝く照明に向かい、耳もつぶれんばかりの爆音に増幅された演奏を、それでも一音も聞き漏らすまい、とにらむ

ぼくらが普段音楽を聴いている環境と、それはあまりにかけ離れているとも思う

しかし日比谷の森でぼくらの演奏は、夕暮れの東京の空とビルのあいだに溶けてって、
セミの鳴き声とぼくの歌声は、夏にとって、まるで並列にあつかわれた

それは、しごくあたりまえのことだ
自然な音楽のあつかわれ方だ

それがとても、とても心地よかったのを覚えている

ぎらぎらと西日に照らされていた、きみたちのいる客席はしだいにブルーに暮れていって
すっかりと夜に落ちたアンコールで、ミラーボールが照らすまで

そうか、気付けば
ぼくはずっと2時間も歌を歌っていた

そんな一日だった

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やっと聴かせることができた新曲群は、フアンの方に賛否両論だって聞く
気に入っているぼくらからすれば、それはとても愉快なことだ!

はやくCDをきみに届けたい
忘れてはないかい?
ぼくらの音楽が、徐々に、徐々にきみを浸していったことを!

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終演後、「一生わすれらんないわー」と、治雄がつぶやいた
たばこを吸いながら

ぼくもまったく、そう思うんだ。


サマー・ヒッピーズ、本当にどうもありがとう

2014年8月 ドレスコーズ 志磨遼平


 

2014年08月21日 19時6分

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