部屋で寝たり起きたりをくり返している。
それは至極あたりまえのことのようだが、それが生活の中心となると、ちょっとまずい。
なにも働いていないワケではなく、意外と様々な仕事があって忙しいのだが、そのどれもが単発的なものだったゆえに、アタマの血の流れがいちいち「とどこおる」のだ。
少し曲を書いては眠り、次の日は頼まれた絵を描き、次の日は読み物を書いて、次の日は外に出て歌い、次の日は過去の仕事をまとめる。といった具合に。
ここしばらくのことをいくつか書き出してみようと思う。
やはり新年なので、たくさんの知人に会う機会が多かった。
新しい出会いもあった。才能ある映画監督、また、自分にぴったりのカシミヤのコート。
このコートはちょっとよくて、今年ぼくは大き目でシルエットの丸いチェスターコートをずっと探していた。でもなかなかイメージどおりのモノが見つからず、ほぼあきらめていたところ、スタジオの帰りに寄った古着屋でこれを発見。いわゆる一目惚れで、店員さんによれば今年の異常寒波で-20℃を記録しているアメリカの田舎街から買い付けてきたばかりだという。その街では、やはり厚手のいいコートがたくさん出たそうだ。そんな話を聞いたら、袖を通しただけでもう越冬したかのように心強い。サイズもピッタリで(ぼくは腕が長いので、日本製のモノだとだいたい袖がつんつるてんになるのだ)即購入。うれしくて毎日着ている。
才能ある監督のことは、またいつかしっかり紹介できる日が来ることを望んで、今は書かずにおく。
お世話になった人の結婚パーティーもあった。それはそれは素晴らしい夜だった。泣いている人もいて、ぼくも一曲、ピアノといっしょに歌った。
結婚といえば、ぼくの親友も結婚を決めた。ぼくは男友達として彼を誇らしく思っている。
ゲスト出演したパーティーはもうひとつあって、先日、川崎のクラブチッタで[Champagne]のライブイベントに呼ばれて行った。
これはスペシャの番組から生まれたライブイベントで、その番組に出たのが縁で、彼らとはずいぶん親しくなった。洋平クンはとてもチャーミングな男だ。ハンサムだし。よく食べるところも魅力的だと思う。
彼とぼくの共通のアイドルであるPRIMAL SCREAMの曲を2曲、[Champagne]をバックに歌った。「ムチャクチャにしていいッスよ」なんて言うからホントにムチャクチャやったのだが彼らのファンは憤慨していないだろうか。
でも、もしこれが逆で、ドレスコーズをバックに彼が歌ったとしても、同じくらいムチャクチャやるだろう。とも思う。だからアレでよかったのだ。
ぼくの友人はみなイイ男である。ぼくはそこらの美人よりもよっぽどイイ男に囲まれて生きている。という話。
さて、TOWER RECORDSを勇退したクニヒロックから、こんなメールが届いた。
「こないだタワレコの新宿店のヤツらと呑んでたんやけど、『バンド・デシネ』がロングヒットしてるって。通常盤が毎日売れていくらしいよ!」
イイ男とイイ女が見つけてくれてるんだろう。まったくもってこの作品が誇らしい。
しかし、いくない男やいくない女も聴く音楽を、ぼくらは作れるだろうか。
はたまた、そんなモノを作る必要はないんだろうか。
きみは、どう思う?
ぼく個人の見解は、「誰もが求めるから、それを正義と呼ぶんだ。」というものである。
例えば、健康な肉体。美しい風景。美味しい料理。やさしいふるまい。いいコート。
そんなすこやかなもの、こと。
ここに、「売れる音楽」を付け加える。正か、否か!
小野田寛郎さんがついに亡くなられた。
実はこの方が、昨年の夏にぼくが書いた“フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)”という歌のモデルだ。
フィリピンのルバング島で、終戦を信じずそこから30年間もたったひとりで戦争を続けた陸軍少尉。それが小野田さんだった。1番の歌詞をもう一度読んでみてほしい。
この曲は、本当は「ピーターパンと小野田少尉」というタイトルだった。歌詞にも名前が登場していた。しかしご存命の方のお名前を出すのはいかがなものか、とスタッフから指摘され、レコーディングの当日に書き直したのだった。
これは、まさか平和の歌ではない。
戦争の歌だ。
ぼくの仲間は、みんな小野田さんと共通しているところがある。だから歌にした。ぼくらは今も戦争を続けていて、勝ってはいないが、負けずに立っている。その限りは敗者じゃない、というだけ。
そして、戦争はこれからも続く、ということ。
ぼくもきみも、この「平坦な戦場」の兵士だ。
…敵は前方、退路はないのだ!
もう窓の外は朝だ。おはよう諸君!
ぼくは夕方から打ち合わせ、今からひと眠りする。