日本語のドレスコード

信藤三雄さんについて。

新作のアートワークが、さきほど公開された。

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今回もシングル“トートロジー”に引き続き、ぼくが敬愛する信藤三雄先生が手がけて下さった。
初回、通常共に自分が大写しになってるもんだから、ついつい小声になってしまうが、本当に、本当に素晴らしいデザインだと毎度のことながら思う。
ちなみに上は通常盤。

音楽専門誌(略して音専誌)ではあまり話す機会がないから、今日は信藤さんについての、ぼくが知るいくつかのことを、きみに話そうと思う。

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信藤三雄(しんどうみつお)。
1948年生。

おそらく世界でも最も多くのCDジャケットを手がけた男。

と同時に。
世界で最も(ジャケットデザインの)アイデアを盗まれた男でもあるかもしれない。

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たとえば、きみの部屋にあるCDをひとつふたつ手にとって、カパッと開いてみるといい。

そしたらその右側、つまりディスクをはめこむトレイに、注目してほしい。

きみが手にとったCDのどちらか一つ、もしくは両方ともが、透明のトレイを使用しているハズだ。

これは信藤三雄(と小西康陽さん)が発明したと言われている。
白か黒のプラスチック製トレイしか存在しなかったCD黎明期に、世界で初めて「ディスクを外さないと見えないデザイン」を施したのが信藤さんだ。

(川勝正幸さんは「透明トレイの特許を取っていたなら、きっと信藤さんと小西さんはビバリー・ヒルズにプール付きの家を持っていただろう」という名言を残している。)

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それでもまだきみが疑うつもりなら、こんな仮説はどうだろう。

『日本のすべてのCDラックには、必ず信藤三雄がデザインを手がけたCDが一枚は置かれている。』

ぼくは、あながちこれが暴論だとは思わないのだ。

たとえば、きみはミスター・チルドレンのCDなんか持ってなかっただろうか?ほとんどのアルバム、シングルが信藤さんによるものだ。

松任谷由実は?サザン・オール・スターズは?

そのどれも持っていない、というならブランキー・ジェット・シティがあるだろう。エレファント・カシマシは?真心ブラザーズは?UAは?

まして、前述した小西さんとのピチカート・ファイブの一連の作品。
フリッパーズ・ギター、コーネリアス、オリジナル・ラブ、カヒミ・カリィ等への卓越したデザインや驚くような特殊パッケージについては、もはやここに書くまでもないだろう。

なぜなら「渋谷系」とは、信藤三雄がデザインするCDの事を指していたのだから。

(そのせいで当時はミスター・チルドレンまでもが渋谷系にくくられていた)

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上に挙げたものは「ぼくが記憶しているカタログ」というせいで、ほとんどが90年代に生まれたデザインばかりだが、当然カタログは今も増え続けていて、もはや天文学的な作品数になっているのではないだろうか。

そして、蛇足ついでにもうひとつ書き加えるなら、80年代初頭にデザイナーとなる前の信藤三雄がリーダーをつとめていたグループ、スクーターズがぼくの生まれた年に発表したアルバム『娘ごころはスクーターズ』も薦めておく。

ぼくの音楽を気に入ってくれたきみには、きっとこれからずっと先までの愛聴盤となるハズだ。


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長々と書いてしまった。

最後に、ぼくが信藤さんに手がけていただいた作品の中で、印象的だったものを、いくつか。

橋の上での女装。

代官山で、白いシーツにべっとり血をつけたこと。

真っ黒なスタジオの、真っ白な花畑。

小道具さんに頼んで作ってもらった、バルタン星人の爪(!)をつけてのゲリラ撮影。(実はこれがイチバンお気に入りだったりする)


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明日はいよいよ“ゴッホ”MVの撮影初日。

うまくいくことを祈っていてほしい。
きみに握手を。

2013年10月03日 21時2分

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